工場見学の話。 2008年 9月

今回のメインの目的は フェラーリの工場の内部見学。
私も中に入るのは1978年以来20年ぶり、だから期待して行ったわけだが
現実は少し違う物だった。

期待したのはフェラーリらしい?職人集団が作る行程とかが見れるのかなとか。
ところが約束の時間に受付に行くと、私等のほかに20人くらいの人が待っている。
カメラは置いていけと没収。
そこでパスを渡され、バスに乗って中を移動。
着いたのは会議室みたいなところで、早速ビデオを見せられる。
内容は大したことは無い。
次に徒歩で別塔に移動して始めはエンジンの製作部門から。
殆どがマシーンの加工で、人は出来た製品をチェックしているような感じ。
面白いのは、加工の機械が日本製が多いこと。

次はボディに各部品を組み立てる生産ラインだ。
よくテレビで見る トヨタなんかのラインのやり方と同じ。
違うのは車が 430と599ということ。
二つの50メートルくらいのラインがあって、8気筒と 12気筒に分かれている。

気になったのは従業員が大半が若いこと。
それも仕事に集中するでもなくこちらの見学ツアーを眺めている。

内装は昔と同じオバはんがミシンを踏んでいたが、皮の裁断はコンピユーター
制御のマシーンだった。つまり全体的に量産車を作る雰囲気。
事実、昨年は6000台を製造し、今年は8000台を目指すと言う。
つまり昔のような少量の車をお客のオーダーで作るようなメーカではなくなって
いるわけだ。

時代が変わってきて、そんな体勢では成り立たないのは判るが、
フェラーリにはあまりハイテクを取り入れて欲しくないというのは私の我侭だろうか。

見学はそのラインで終わり。非常に簡単。大体30分くらい。
何故かと言うと世界中から見学希望が殺到し、1日で多分10組ほどの
ツアーをやらなければいけないからだ。
それだけこの企業がメジャーになったと言うことだし、
それだけ収益も上げているということだろう。
事実、拡張につぐ拡張でどんどん敷地はひろがっている。
マセラーティも同じところで作っていた。だったらマセの名前なんか使うな。

テストに出かける裏門。ここはFじゃないのか?



現在フェラーリの株は殆どがフィアットが保有している。
フィアットは国営企業だ。てことはフェラーリもイタリアの国がやっているようなもの。
日本のコーンズが努力したおかげ?で
355以降、大量にこの国に入ってきたが、それはイタリアの経済を少なからず支
える為、あるいはイタリア人の趣味の、いや生きがいのフェラーリF1の資金を支
えるためでもあるわけだ。

ついでにガレリア(フェラーリ社が経営するミュージアム)も見たが
中身はF1の歴史だけで相変わらずつまらない内容だ。

おそらくエンツオが生きていたときも、生産車は彼にとってF1の資金稼ぎであり
別にそれを買ってくれる顧客に媚びることは無かったと思う。

だから私も冷静に振り返ってみてフェラーリの50数年の歴史の中で
エンツオが目指した、(多分)
その時々で世界最高のスポーツカーを作る。それがF1の資金の種になる。
ライバルのポルシェやアストンなどとは全然異なる、デザイン性など

それらはやはり70年代で終わっている。
80年以降は他のメーカーと同様、量産スポーツカーメーカーなのだ。

今の現行モデル 430は2500万くらい、
日産のGTRは1000万?
例えばサーキットでよーいドンでタイムを計ったらどっちが早いか判るよね?

こんだけ時代がハイテクになればフェラーリだけが速いという時代ではなくなって
いるわけだ。

今のFを新車に近い状態で買うのは女の子がブランドのバッグを持つのと同じ意味
だから直ぐに飽きる。
オークションでモデナの売り物がメチャ多いのはそれを表している。
別のバッグを欲しくなる。あるいは次の新型Fをだ。

金持ちのヒエラルキーとはそんなもの。
まわりよりも常に新しい物、高価な物を持ちたがる。
モンテゼモロも商売上手だからそんなことは百も承知、
新型を幾ら高くしたところで、そういうい連中は嬉しそうに買うだろう。と たかをくくっ
ている。

今回の工場見学で長年Fを見続けてきた私は、自分のFに対する認識が間違って
いないことを再認識した。

本物の、あえて2回言う、本物のフェラーリは1970年代までと断言する。
つまりモデルで言えば 512BBのキャブまで。
エンツオが生きていた時代の車を手に入れる、これって凄いことじゃない?

今回同行した清川さんと。
彼はF50、F40、430スパイダー、430スクーデリア、ディトナ 512BBなどを
所有する生粋のフェラーリマニアだ。私とも仲が良い。歳は私のほうがアニキだ。




ガレリアで。







近くのバールで飲み物を頼む、堀籠さん。



今回も堀籠さんにはお世話になった。



裏のフィオラノでは430スクーデリアのテストが行われていた。
面白いのはここは前は単なる金網でところどころ破れていたりしたが
今回行くと綺麗な鉄の格子になっていた。モンテゼモロの指示か?



ガレリアで唯一興味深いのがこのエンツオのコーナー。
と言っても、写真とオフィスの再現だけだが。



モデナにあったエンツオのオフィス。デスクには例のパープルのインク瓶も忠実に置かれている。
但し、テレビのモニターは後で付けたもの。



正門前のレストラン キャバリーノで。
左からエンツオ ニキラウダ、モンテゼモロ。1970年くらいか
やはり、何処の企業でも(キャステルでも)そうだが
強力なリーダーがいないと会社はそのイメージを打ち出せない。
勿論、日本の政治家もだ。
フェラーリなんか完全に エンツオのイメージで車を作り、レースを走らせていたような物。

モンテゼモロは経営者としては才能があるがカリスマのリーダーではない。
だから今の新型モデルがつまらなく見える。
つまりなんかよそよそしい、雰囲気。
マーケティング至上主義というか。



ここはツアー客の流れでいつも一杯。予約無しでは入れない。



エントランスにある、バール。イタリア人は大概 立ってコーヒーなどを飲む。



キャバリーノで食事するのは良いが、マラネロ自体は少々飽きた。
理由は何かしら私にパッションを与えてくれる物が無いからだ。
これなら、小さな工場でもレストアしている古いフェラーリでも見たほうが楽しいし、
有意義だ。